中国・インドの仏跡を巡る旅を続ける寂昭法師[大江定基]は、中国の清涼山(しょうりょうぜん)[現在の中国山西省]にある石橋付近に着きます。そこにひとりの樵の少年が現れ、寂昭法師と言葉を交わし、橋の向こうは文殊菩薩の浄土であること、この橋は狭く長く、深い谷に掛かり、人の容易に渡れるものではないこと[仏道修行の困難を示唆]などを教えます。そして、ここで待てば奇瑞を見るだろうと告げ、姿を消します。
寂昭法師が待っていると、やがて、橋の向こうから文殊の使いである獅子が現われます。香り高く咲き誇る牡丹の花に戯れ、獅子舞を舞ったのち、もとの獅子の座、すなわち文殊菩薩の乗り物に戻ります。
祝言の色合いを持った切能で、獅子舞という独特の舞が入ります。獅子舞は特殊な型、動きや表現力が要求される重い習い事であり、そのため石橋は披き物の能のひとつとなっています。流儀によって一部演出が異なり、前シテをツレとしたり、間狂言が入らなかったりする場合[宝生流]もあります。最近では、後半部分だけを上演する「半能」の形式で行われることが頻繁にあります。また多くの流儀で、2頭の獅子が連なって出る連獅子という演出もよく行われます。
この能のみどころは、何といっても稀に見る絢爛豪華な舞。見る人を明るくすがすがしい気持ちで満たすことでしょう。能を知らない人でもシンプルに楽しめるからか、かつては海外の賓客をもてなす演能でも舞われました。
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