答えから言えば、よく分からない、が通説のようです。あまりに古い芸能のため、なぜそう呼ばれるようになったのかを記録から読み解くことが難しいからです。演劇としての「能」の最古の記録は14世紀の中頃と言われます(*)。江戸時代が終わるまで、「能」と「猿楽」は、どちらの言葉も使われていました。「能楽」という言葉は、明治政府による、能役者の保護を担う組織として誕生した「能楽社」に由来するもので、近代の呼び方なのです。「能」の名称の意味を考えることは、能とは何か、と問うことなのかもしれません。
(*)参考資料『現代能楽講義』天野文雄著(大阪大学出版会)
「能楽トリビア」は作成にあたってこちらの文献を参考にしています。