能は、その誕生期から膨大な演目が生み出されました。現在、長い歴史を生き残り、時代を超えてきた約200曲前後(流儀によって異同あり)が「現行曲」として主に演じられています。その大半は室町時代末期までに作られた演目です。江戸時代には幕府の保護を受けていた一方で、命じられた演目はいつでも完璧に演じなければならなかったため、演じる曲目一覧をまとめたことで「現行曲」と「廃曲」とに分けられました。
明治以降は、流儀の判断によって演目の見直しが行われていったことから、それぞれ現行曲の数が異なります。「廃曲」は、常に準備しておく(練習を重ねて身につけておく)曲ではないというほどの意味であり、演じてはいけないわけではありません。近年では「廃曲」を演じる「復曲」もしばしば行われるようになりました。演じ手、観客双方に、能の魅力を見つめなおす機会ともなっています。