およそ700年の歴史をもつ能の貴重な文献資料として、15世紀前半(応永年間)に世阿弥自身が書き記した能本(能の脚本)が残されています。国の重要文化財です。
「難波」「布留(廃曲)」「松浦(廃曲)」「阿古屋松(廃曲)」などの4巻が観世家に、金春家に5巻が伝来しています。すべてがカタカナで記されていますが、これは、発音どおりの表記をするためだと考えられています。
振り付け、演出の注記だけでなく、世阿弥以前の古作にも多くの手を加えている推敲の跡が読みとれる資料です。能が変化しながら、今のかたちへと向かっていった、その息づかいを現代に伝えるものです。