ほとんどの能楽師はフリーランスの個人事業主です。歌舞伎の場合、多くの役者が松竹と専属契約を結んでおり、松竹が興行を支えますが、能楽師は基本的に裏方作業も自分で行う必要があります。
とはいえ能楽師どうしのつながりが希薄なわけでは当然ありません。
能の公演にはシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方の協力が必須。能楽師どうしは密に交流しています。これら狂言方や囃子方を含め、能楽師全員が所属する団体が能楽協会です。能楽師になるための国家資格はありませんが、協会に所属していることがプロとしての条件といえるでしょう。
ただし協会は個々の公演の面倒は見てくれません。共演者や劇場側との交渉、チケットの手配などは大抵シテ方の仕事です。技量はもちろん、マネジメントやプロデュースといった多面的な能力が要求される職業がシテ方なのです。