小鼓と大鼓は、形状こそは同一楽器の大小の違いのように見えます。実際、砂時計型の胴は、桜材をくり抜いて作り、その両面を馬の革で挟んだ構造は同じです。しかし、大鼓は甲高い「カーン」と響き渡る音を鳴らす必要があるため、独自の工夫と調整が必要です。革がピンと張るほど音が高くなります。
そのため、開演2時間前から、奏者は楽屋で革を火で温めて乾燥させます。昔は火鉢を用いましたが、現在では電気暖房器具も使われるようです。季節に関係なく、汗だくで準備をします。開演前に調所で革と胴をがっちりと締め上げ、大鼓をくみ上げて完成です。
演奏時間よりも長い準備を終えて、舞台に登場するのです。力強い打ち手で男性的な音色を生む大鼓の革は傷みが激しく、馬の尻、背中、肩などの強い革が使われています。