能の舞台は、この世とはことなる別の世界が現れる場所。そのため現代社会の事柄を持ち込むことは避けます。指輪や腕時計、アクセサリーなどの装飾品は外します。さらにメガネも。コンタクトレンズは客席からはしていても見えませんが、舞台に上がるときには外す人もいるようです。
装飾品等を外すことは、単に舞台上の決まりや見た目の配慮にとどまらない、舞台に上がる上での大切な気構えです。能では演じ手はもちろん、囃子方も地謡方も位置が決まっており、その場をしっかりと外さないように振舞うことができれば、自然に能を表現することができます。たとえ眼の悪い能楽師でも、メガネをかけないで視界の悪さを克服し、舞台上での所作を滞りなくこなせるのは、日々積み重ねてきた努力があるのです。