能舞台には檜の厚板が用いられています。その檜にまつわるちょっとおもしろいお話を。
東京の観世能楽堂の本舞台は、檜の一枚板が数枚張られていますが、年に2回ほど、専門家により調整が行われています。7月〜8月の高温多湿時期には板が膨張し、上に盛り上がります。そこで、地謡座側の緩衝材を外し、少しずつずらして板と板の間を開けます。反対に1月〜2月の冬期には、板が縮み、隙間ができてしまいます。すると今度は、目付柱の方へ少しずつ板を寄せ、地謡座の方へ緩衝材を入れて調整します。
伐採され木材となっても、また年月が経っても檜は生きているということでしょう。その有り様を尊重し、舞台を最上に整えるための努力がなされているのです。