能面の毛髪やひげに使われているのは、馬の毛です。長いものには馬の尾、短いものには馬のたてがみが使われます。尾の方が腰もあって、ブラシなどに使用される素材でもあります。
実際に毛髪や眉、ひげをつけるのは、男性の面や鬼神の面です。女性の面の毛髪は、描かれています。
一方で女面をかけるときには、一緒に鬘(かづら)を使いますが、実は、これにも馬の毛が使われています。
鬘は、演者に合わせたものを用意するのではなく、毎回、演者の頭部に合わせて結い上げていきます。これを「馬毛(ばす)」と呼びます。古くは人毛を用いたそうですが、管理が難しく、馬の毛になったようです。