途中、シテ方が揚げ幕に戻る、前シテ、後シテの構成の場合、その間を中入と呼びます。観客の立場からすると、1部と2部の間の幕間、休憩時間と考えたくなります。ところが舞台上では、間狂言の語りが行われ、その内容は物語のあらすじをなぞるかのよう……。さて、この時間はどうやって過ごしたらいいのかと悩む方もいるでしょう。
中入では、舞台裏でシテ方が装束を着替えたりしているのですが、そればかりではありません。中入は観客が後半に臨む準備を行う時間だという考え方もあります。前場で展開された世界ははたして現実か幻か。それを間狂言の語りを通して自問すれば、後半に登場人物のより深い世界を導く後シテを鑑賞する気構えを整えられます。ホッと一息入れるだけではなく、さらに一歩舞台に身を乗り出すと、一曲の味わいが、よりいっそう深まるかもしれません。