出雲國三大社のひとつ、島根県の佐太神社は、平安時代の延喜式に「出雲國二ノ宮」と称された由緒ある格式の高い神社です。ここに伝わる「佐陀神能(さだしんのう)」という神事舞は、能と深い縁があります。
佐陀神能は、毎年9月24日、25日に行われる「御座替祭(ござがえさい)」という神事であり、神への祭礼の「七座」、祝言の「式三番」、神話劇の「神能」の3部から成っています。「式三番」は、能の「翁」とも縁深い古い芸能です。さらにまた、「神能」は慶長の頃(16世紀末から17世紀初め)、佐太神社の神楽司(かぐらつかさ)であった幣主祝(へいぬしはふり)の宮川兵部少輔秀行が京に上った際、当時都で流行っていた猿楽能の所作や形式を学んで創作したと伝えられています。
「神能」の演じ手にシテ、ワキ、ツレ、トモなどの役割があり、また、演者の詞の間を地謡でつなぐ点や、お囃子が笛、小鼓、大鼓、太鼓を主とすること、面を用いることなど、能との共通点が多くみられます。一方で、囃子方が神職を思わせる白装束という点などは一般の能と異なり、神職と氏子による神事として継承されてきたことを物語っています。
400年余にわたり継承され、出雲神楽の源流である点なども高く評価され、佐陀神能は、2011年11月にユネスコ無形文化遺産リストに登録されました。