2019年、皇位継承により平成から令和への改元があり、新しい時代が始まりました。さて、この改元の時に上演されるという能があります。「
「大典」とはもともと、重大な儀式の意で、天皇即位にかかる皇室儀礼「即位の礼」を「御大典」とも称します。能「大典」は、この御大典にちなんだ内容になっています。それは、新天皇の即位式大典の奉告祭が、京都の平安神宮で行われた際に、神前に詣でて奉告を行った勅使(ワキ)の前に、奇瑞とともに天女(ツレ)が現れて天女の舞を舞います。やがて
改元(5月)、即位の礼(10月)と打ち続く2019年からしばらくの間は、「大典」が演じられる稀有な機会。7月には、1990(平成2)年の上演(於:熱田神宮)以来、30年ぶりに横浜能楽堂で九世片山九郎右衛門のシテにより、上演されました。このときは法政大学名誉教授・西野春雄氏が監修し、物語の舞台を平安神宮から伊勢神宮に移すなど、現代に合った内容に変更しています。
また「大典」を改作した「平安」という曲もあります。1961(昭和36)年、 “即位”ではなく“国の安寧、繁栄”を祈り舞う内容で、平安神宮にて上演されました。「平安」はその内容から上演機会に縛られません。2019年5月の京都薪能でも上演されましたが、こちらも注目されます。