能「大会(だいえ)」では、面を使った独特の演出がなされます。面を二重にかけておき、それを外す早変わりが後場(のちば)の見どころとなっています。僧侶の願いを聞き入れたカラス天狗が釈迦に化けて説法を行います。それを知った帝釈天が怒り、カラス天狗を懲らしめるシーンです。
面だけではなく、装束も二重にまとい、釈迦からカラス天狗への早変わりを行いますが、重ねた装束が重い上に、面を二重にするためシテは前方がほとんど見えません。その条件下で激しい動きと瞬時の早変わりを行います。
「大会」で使われる面は、この演目用に重ねることが前提のものですが、観世流と金剛流のみにある稀曲の「現在七面」では通常の面を重ねてかけます。蛇身(般若)から天女(増(ぞう)など)に早変わりするというものです。また早変わりで有名なのが「道成寺」。これは鐘の中に面が隠されていて、それを付け替えて早変わりします。