シテ方5流のうち、観世流に次ぐ隆盛を誇る宝生流。江戸時代には5代将軍徳川綱吉や、11代将軍徳川家斉らの庇護を受け、流勢を拡大しました。また特に金沢を中心とする北陸では、加賀藩5代藩主・前田綱紀が推奨したこともあり、武家や庶民の間で宝生流が大流行しました。今も趣味で能をたしなむ人が多く、関連イベントが頻繁に開催されるほか、2006年には「金沢能楽美術館」が開館するなど影響は連綿と続いています(トリビア58)。
宝生流でよく言及されるのが、「
さまざまな解釈があり、派手さのない重厚・堅実な芸風から、その謡にいぶし銀のような魅力を感じる人もあれば、「節の一つひとつを明瞭に扱う」「拍子に合うところをはっきりと扱う」といった謡い方を特長に挙げる人もあります。
また、節そのものが華麗で、変化に富むこともポイントのひとつでしょう。わかりやすい例が、ヨワ吟で「
逆に、殊更に寂しい場面、悲痛な場面、暗い情景の描写など、一見地味で目立たないようなところにも活用され、劇的効果を高めるケースも見られます。
ヨワ吟のカングリの節は、江戸時代、家斉の指南役となった14代宝生
宝生の謡に接する機会があれば、ぜひ、その独特の節扱いの妙味を楽しんでみてください。